『ハジメノイッポ』
付き合い始めて、3ヶ月。デートは、3度目。 最初のデートは緊張しすぎて、何にも覚えてない。 2回目は、啓介さんの多忙なスケジュールの合間に会ったから、慌ただしくてデートって感じじゃなかった。 で、今日。 3度目の正直、ならぬ3度目のデート。 あたしはある決意を抱いて臨もうとしている。 それは…彼と手を繋ぐこと。 ちょうど一週間前。 今日のデートが決まったことの報告も兼ねて、いつものカフェで親友と待ち合わせた。 「で、どぉなの?キスくらいはしたの?」 「き、キスぅ…!?」 親友の唐突な発言に、あたしは全力で首を横に振った。だって、キスなんてキスなんて…手だって繋いだことないのに。 「ふぅーん…意外とオクテなんだぁ、恭子の彼。」 「違う…と思う。だ、だって、スッゴイモテるって啓介さんの友達が言ってたし、前に付き合ってた彼女もいたみたいだし…」 自分で言っておきながら、何となく切なくなってうつ向いてしまう。 「ちょっとぉ、なんでアンタがそんなことで落ち込んでんのよ?今つきあってるのは恭子なんだよ?今一番幸せな時期でしょーよ?」 「そうだけど…でもっ…不安だよぉ…あたしが緊張してるせいなのかなぁ…」 「大事にされてる、って思いなさいよ。それに、キスくらい恭子から迫ってもいいんだしねぇ…」 そう言って、親友がニヤリとしながら、顔を覗き込む。 「そそそんなの絶対、無理ー!だって手だって繋いでないのに…」 「はぁっ!?アンタたち手も繋いでないのぉ!?中学生かっ!」 「だって、あたし男の人とつきあうの初めてだし、どおしたらいいかわかんないよー」 予想以上に進展のないことに、目を丸くして身を乗り出す親友。 落ち込むを通り越して、何だか泣けてくる。 「そんなの、隣歩いてるときにさりげなくでいいのっ!ちょっと恭子、来週のデートで最低でも手くらい繋ぎなよ?こんな調子じゃ、エッチする頃にはおばあちゃんになっちゃうよ!」 「…!!」 というわけで、親友の熱い期待(というか命令)を受けて、あたしは今日のデートを迎えたのだ。 「げぇ…やっぱ混んでんな…」 隣を歩く啓介さんが、人の多さに辟易としたように呟いた。言われてみれば、周りは家族連れやらカップルで賑わっている。例の事で頭がいっぱいのあたしはそんなこと全然気づかなかった。緊張してたから。 「ほ、本当だね…でも日曜だし?しょーがないよー」 あたしはどこかぎこちない笑顔でそう言いつつ、心の中でガッツポーズした。 (人多い方がさりげなくできそうだよねっ…ツイてるぅ…) 「ちぇ…人混み苦手なんだよなー…あ、お前はぐれんなよ?」 小せえからはぐれたらわかんねーぞ、何て冗談混じりに啓介さんが言う。えっ、もしかして今チャンス?今なら…さりげなく… 「ま、はぐれたら迷子の放送頼んでやっから。」 あたしがそっと手を伸ばした瞬間、伸ばした先の啓介さんの手があたしの頭に伸びて、ぽんぽんと叩きながらからかうようにそう言う。 「もぉ、子供扱いしてっ」 何だか無性に悔しくなって、あたしは思わずそっぽを向いてうつ向いた。 だって、あたしたち付き合ってるんだよね? それなのに、どうして恋人らしくならないんだろ。 何で手くらい繋げないんだろ。 こんなんじゃ、本当におばあちゃんになっちゃうよぉ… 「恭子?怒ってんのか?」 啓介さんが長身を屈めてあたしの顔を覗き込む。 「おい、悪かったって。だから機嫌直せよ。ほら、行くぞ?」 そういって、啓介さんがあたしの前に手を差し出した。 え…手…? あたしは思わず目を瞬かせた。 夢、じゃない。 そう思ったあたしは、恐る恐る啓介さんの手を握った。 大きい手。そして、あたしのより体温の高い手。 初めて繋いだ啓介さんの手。 ただそれだけで、胸がドキドキする。 すごい、嬉しいっ…!幸せっ! 「ぷっ…」 「へ…?」 隣で啓介さんが急に吹き出した。あたしは何でかわからなくて、啓介さんの顔を見上げた。後から聞いた話だと、それはもうにへら、としたアホ面だったらしい。 「…くっ…くくっ」 見上げたあたしの顔を見て、さらに啓介さんが笑い出す。込み上げる笑い声を必死で堪えるながら、啓介さんが言った。 「お前って、本当にわかりやすい…」 |
そしてこちらへv
うひゃあ!(ごろんごろん←転がり回る音)
い、イラスト描いて、こんな素敵文いただけるなんて!&物書きとしてすごくうれしいです!!
こう・・・妄想の世界を共有する、っていうの?(え)イメージをお伝えできたんだなあ、ってこの上ない喜びです。
nanaさま、二重の幸せありがとうございましたv「読みたい読みたい」しつこくてすみませんでした(笑)
nanaさまの素敵サイトはこちら「blanco y negro (ブランコ イ ネグロ)」