「来週土曜・・・ああ、空いてる」

ぴったりと背後霊よろしく張り付いてくる興味津々な緒美をはがしつつ、部屋に戻り、がっちりとドアを閉めた。


かと思うとすぐに出てきて、階段から身を乗り出して緒美を呼ぶ。






「お前、キャベツいくついるー!?」




「キャベ・・・いくつって!?」



隣の部屋からたまらない、といった感じの笑い声がくすくすと聞こえた。




 「つぐみ」という名前に、しまった、と恭子は思った。

確かに前、啓介は「FDに恭子以外の女を乗せていない」と言ってはいたが、特別な女性はいない、という意味だと勝手に思いこんで、ちょっとどきりとした。

そう、自分の都合良く。

あの日洗車したと言っていたから「それから女は乗せていない」という意味かもしれないのに。


ううん、そうじゃない。
あたしは『ピアス届けてくれたお礼』をしたいだけ。


今、啓介さんに特別な人がいるとか、そういうのは問題外・・・のはず。


そんなんじゃないもの。


あたしと啓介さんで「この先」なんてないもの。


わかってる。

でも、やっぱり



穏やかじゃ、ないなぁ・・・・・・・・・・。


「じゃ、今日もらおーかな。イトコが夕飯ロールキャベツにするとか言って張り切ってるから」


うん、思い切りベタな展開で自分に呆れた。





 高速近くで待ち合わせて、豊作キャベツと対面して開口一番


「だからって・・・多すぎるだろ、このキャベツ」


「まだあるんだって」
「それは聞かなかったことにする」

一蹴したあと、「あ」と声を出す。


「これから史浩に用があるんだけど、こいつお裾分けするか」



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